本書におけるサリドマイドの記述について
 本書68ページにて、先天奇形を起こした薬害の例として「サリドマイド」を挙げ、「睡眠薬として開発され、つわり防止剤や胃腸薬にも使用された。製造過程で生じる不純物に強い催奇性があり、これを服用した妊婦から四肢の発育不全(アザラシ肢症)を伴う新生児の出産が相次いだ」と記述しました。
 サリドマイドは、原子組成及びその結合関係が同じでありながら立体的に重なることができない対掌体(R体とS体)の等量混合物(ラセミ体)であり、R体に催眠作用や鎮静作用が、S体に催奇性があることが確認されています。従って、一般的には目的物質に対して微量の夾雑物をさす「不純物」という表現は適切ではなく、正確には「ラセミ体として製造された一方の対掌体に強い催奇性があり、」となります。
 なお、サリドマイドの催奇性はマウスやラットでは確認できず、ウサギで一部の、マーモセットなどの霊長類でヒトとほぼ同様の症状が見られます。サリドマイドは薬の服用と先天奇形の因果関係が大きく注目されることになった初めての例であり、副作用を判定する手段としての動物実験の限界も浮き彫りにしました。

(読者の方より、不純物の表記についてのご指摘をいただきました。ありがとうございます)
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